History of the Timepiece
一本の時計から歴史を読み解く。
本個体は、Rolex サブマリーナー デイト Ref.1680/8。
希少なパープルチェンジダイヤルを備えた一本です。
通称“青サブ”として知られるこのリファレンスは、もともと流通量が限られているうえ、経年変化によってダイヤルが多様な表情へと変化することで知られています。その中でも、深みのあるパープルへと変化した個体は、特に高い評価を受ける存在です。
さらに本個体は、裏蓋の刻印からその来歴を読み解くことができます。
スイスで製造された後、ロンドンの港を経由し、ロレックスのイギリス支社によって輸入されたことを示す、明確な履歴が刻まれています。
時計は、単なる外観だけで語られるものではありません。
どこを経てきたのか、そしてどのように時を重ねてきたのか——
そのすべてが価値を形作ります。
その細部に宿るストーリーを辿りながら、
“時間を所有する贅沢”をご体感いただければ幸いです。

このパープルチェンジを遂げた一本に刻まれた背景を紐解く。
裏蓋には、本個体の来歴を示す複数の刻印が確認される。
1974年にロンドンの港で輸入されたことを意味する「T」のロゴ。スクエア内にΩが配された、ブリティッシュで登録された18金無垢のホールマーク。さらに「750」の刻印と、その左側に横向きに配された「18」の数字は、1975年までブリティッシュで登録された18金無垢であることを示す。加えて、スイスの農婦の顔をモチーフとしたホールマークと、「18K」「0.750」の表記は、スイスで製造された18金無垢である証でもある。
これらすべての刻印は、裏蓋という限られた空間に、その意味を持ったメッセージとして深く刻まれている。
本個体は、スイスから直接ロンドンの港へ輸出されたことを示し、 さらに「RWC Ltd」の刻印が語る通り、ロレックスのイギリス支社によって直接輸入された個体である。
特別な意味を持って輸入されたことを示す証として、 裏蓋センターに刻まれたシリアルナンバーが、そのストーリーを完結させている。

1969年、世界で初めて18金無垢で製造されたプロフェッショナルダイバーモデルとして、Ref.1680/8が登場。
ブラックダイヤルが先行し、1971年には、澄み切った海を思わせるブルーダイヤルが登場した。
当時ダイバーモデルに金無垢という組み合わせは異質な存在であったにもかかわらす、このモデルは世界中の人々にとって憧れの存在となり、 それを手にすることが一つの象徴とも言える存在であった。
1979年、その初代モデルである “ロレックス オイスターパーペチュアルデイト サブマリーナ 18金無垢 Ref.1680/8”は、 後継機Ref.16808へとその役割を引き継いでいく。

今回ご紹介するRef.1680/8は、製造期間が比較的短く、 現在では世界市場において流通量が大きく減少しているリファレンスである。
近年では価格の高騰に伴い、ケースのみを精巧に再現した偽物も確認されている。実際に、日本のロレックスカスタマーサービスにおいても、 それらが本物として見積もられた事例があったほどである。
現在では、各国ロレックス支社において非破壊検査による素材検証が導入され、 18金無垢の真贋判定はより厳格に行われている。
そうした背景の中で、本個体はイギリス向けに特別に発注された個体であり、 サブマリーナのオイスターデイト・ファーストモデルとして、 高い耐久性と精度を誇るCal.1575を搭載している。

そして最大の特徴は、ダイヤルの色調にある。
いわゆる“青サブ”として知られる本モデルは、 経年変化により複数の表情を見せることで知られており、その中でもパープルへと変化した個体は特に人気が高い。
本個体もまた、そのパープルチェンジが美しく現れた一本であり、 強い存在感を放つ個体である。
なお、本個体は過去にロレックスにて見積り確認が行われた、真正性の確認された個体である。
ベゼルインサートは欠損しているものの、 それを補って余りある魅力を備えている。
希少性、来歴、そして経年による変化。 それらが重なり合った一本として、 実物をご覧いただく価値のある個体です。